工事費のコスト削減を進める時のリスクとその回避方法
高騰する工事費をどうにかして低減させていきたいと考えるのは、発注側としては当然のことと思います。ただむやみやたらにコスト削減を推し進めようとすると、リスクがいくつか発生する場合があります。工事や建築の業界に不慣れな場合には、一度問題が起こると防ぐ手立てが少なくなり、時には通常かかる費用以上の負担を強いられることになるケースもあります。しかし、これらリスクも、画全体の流れを理解していれば、事前に対策を行い問題発生時の回避が可能です。今回は、工事費をコスト削減する際に特に注意すべきリスクについてご紹介したいと思います。
スケジュールのリスク
・リスク内容
会社として工事を計画する場合、社内で稟議を申請することになると思います。工事の内容を仕立てて稟議を申請し決裁されると、その計画した期日までに工事を終わらせる責任が発生することと同様の意味になります。物事がスムーズに全て進めば問題はありませんが、工事は色々な問題が起こるものです。さらに、社内協議に日数が掛かってしまう、見積依頼業者や設計会社が意図的にスケジュールを遅らせようとするということもあります。そうすると、時間が少ない中で物事を判断をしなくてはならないリスクが発生します。
・回避方法
基本的には工事完了予定日から逆算をして、現場確認、図面の完成日や見積の受領日、発注先の決定日など全てのスケジューリングを行ないます。社内協議自体も具体的にいつまでに回答を出すと言う期限を作ると良いでしょう。ただし、見積依頼業者や第三者の思惑により、図面や見積の提出を意図的に遅らされる事は多々あります。なぜなら、見積提出日を遅らせることができれば発注者側の検討期間は自ずと短くなり、相見積もり企業や社内での調整が困難となり結果、自社の受注確率が高まると考えているためです。そのため、図面の依頼先には厳格に提出期限を守る事や事前にしっかりとした図面を作り上げ提出書面内容を漏れなく伝えるなどで対応する必要があります。
見積依頼する業者が集まらないリスク
・リスク内容
近年、建設業界は人材不足ということもあり多忙な会社が増えています。また、大手の建設会社は、工事する案件が無くても人材の囲い込みのため下請となる建設会社の予定を予め抑えるということもしています。そのため、多忙であることや現場管理する人員がいないという理由で見積依頼をする前の段階で、断られるケースも増えています。時期によって空いている、空いていないということはあるものの工事を計画したいという時に見積依頼する業者がそもそも見つからないというリスクがあります。
・回避方法
見積依頼しても施工会社からのお断りもあることを想定して、数多くの施工会社の情報を網羅し打診をすることが必要です。年内に何店舗も出店するなど工事の計画が継続的に発生する場合には、施工会社リストを作成し計画段階からお声がけをしておくと良いでしょう。また、今まで協力いただいていた施工会社と共に、新たに依頼出来る施工会社も増やしていくと良いでしょう。依頼する際も計画内容やスケジュールを早期に伝えて、相手の日程を確保すると良いでしょう。
発注後の設計変更のリスク
・リスク内容
発注をする施工会社が決定し、工事を進める中で当初は気づかなかった問題や計画に入っていなかった点、思い改めて変更をしたい箇所が出てくることもあるかと思います。その場合、工事の内容を変更することになりますが、発生する追加工事の見積は一般的に施工会社にとっての利益率が高くなる(工事費が相場よりも高額になる)ケースが多いです。なぜならば、追加工事は施工会社側から見ると、受注している案件であり相見積もり業者という競争他社がいないため受注率が格段に高くなる案件となるためです。
・回避方法
まずは設計段階で変更が生じない様に綿密に設計・図面を抜け漏れなく作り上げることが必要でしょう。その上で、もし設計変更が必要になった場合でもその都度、工事内容と金額を確認し、他の回避方法がないかなど協議を行った上で、追加工事の採否を行なうようにすると良いでしょう。とりあえず、設計変更となった工事について確認をしないで追加工事を行い、後々の精算時にトラブルとなっている話をよくお聞きしますので注意してください。
まとめ
当社過去の案件においても全体の取組の流れや各社との関係性を俯瞰して見ると、リスクとしてトラブルになりそうな点や問題が起こりそうな点は事前に発見できる場合が多いです。先手先手で事前に対策が打てるように情報収集とその情報活用をうまく行なっていただき工事を無理なく安全に進めていただければと思います。