施工会社から紹介された設計事務所(デザイン会社)の提案で気をつけておくべきこと
工事を進めていく上で設計と施工をどう管理していくかは重要な視点の一つです。当社が日々ご相談を受ける中で、「設計と施工を分離して契約し、コストマネジメントしている」とお話しいただく方もいらっしゃいます。しかし、どういった経緯でその設計会社と契約されたのかを深くお聞きすると、意外に多いのが「施工会社から紹介を受けて設計(デザイン)事務所と契約した」ということです。
このような紹介での設計事務所を評価する時に気をつけるべき点があります。その内の一つが、「設計会社やデザイン事務所の役割である『設計監理業務』を信頼し任せることができるか」です。しかしながら、この視点で評価している施主様(発注者)は少ない印象です。しっかりと設計監理業務について理解し、設計と施工について進めいていくことが重要です。
設計監理業務とは
「設計監理業務」とは施主の計画を現実にするため、建築や内装といったハード面で施主の代理となって法令遵守・品質確保等を行う役割(業務)のことです。施主は頻繁に現場に居られるわけではないため、現場を管理することになる設計監理担当者が無事に工事を完了させる役割を代わりに担います。これは施主の代理となる存在であること同様で、非常に重要で役割であるといえるでしょう。また、設計監理担当者は何かしらのトラブルが起こる工事現場において、施主と同じ目線を持ちながらも専門的な見地から施主にアドバイスし、施工会社へ是正をかけていくことも求められます。施主に対して業界知識や慣習などを補填するサポーター的な存在なのです。この様な視点を踏まえて、冒頭にあげた「マネジメントができているかどうか」、「本来の意味での役割を任せられるか」を評価する必要があるでしょう。今回のコラムでは、施工会社から設計事務所やデザイン事務所を紹介された場合において認識しておくべき点について紹介いたします。
設計事務所(デザイン事務所)は施工会社の顔色を見ていることが多い
物件や工事ありきで施工会社から紹介を受けた設計事務所から見積や提案を受ける場合、業務内容として設計図書の作成は当然のことながら提案に含まれているでしょう。また、施主の意向や計画を反映する形での意匠や内装イメージ等の提案もあると思われます。しかしながら、その提案や見積は紹介元である施工会社の意向も汲む内容となっている事がしばしばあります。具体的には、紹介元が影響力のある施工会社、メーカーであれば提案図面の種類をわざと少なくする縛りを加えたり、図面の提出日程を遅らせるなど調整することがあります。この設計事務所の動きは意図的に施主の見積精査の時間を制限し、他社の見積が取れない様に調整していると言えるでしょう。この様に設計事務所(デザイン事務所)も自身が受注したいがために、紹介元である施工会社やメーカーが有利になるよう協力しているのです。もちろん紹介元と紹介された設計事務所の関係性にもよりますが、紹介する側としては関係性の強い(影響を与えやすい)企業を紹介して、自社が受注しやすいように提案内容も調整しようとするのがむしろ当然ともいえるでしょう。
見積内容は出来レースになっていることが多い
とある経営者の方からのご相談の中で「相見積もりを社内の購買規定として定めており、設計と施工の業務は分離できている。」という方がおられました。この経営者様は設計と施工を分離することの重要性を認識されており、正しい考え方をお持ちです。しかし、もう一歩踏み込んで考えると、当社は設計と施工が分離できている状況とは、見積依頼先の抽出・選定が出来ていて初めて成り立つものであると考えています。すなわち、見積条件をしっかりと揃えて正しい企業から見積もりを取得できていることが設計施工を分離する上での前提条件であるということです。例えば、施工会社3社からの見積取得を依頼した場合、うち1社は紹介元の施工会社からの見積取得で、残り2社は紹介された設計事務所関係から見積取得されている場合があるとします。この見積取得では、いずれの会社も紹介元の影響下にある調整された提案であり、適正な評価がそもそもできません。ただ単に3つの見積を取得した状態であると言え、提案内容は出来レースになっていることでしょう。
上記2点から考えると、設計事務所やデザイン会社を選定する際には施工会社を絡ませずに独自に見つけ出す事が重要であると考えられます。もしくは施工に関係がない人的なルートから探し、設計監理業務を委託するしかありません。設計会社を選定するにあたって、商流に施工会社が入るケースには良し悪しがありますが、コストマネジメントが出来なくなってしまうものだと認識された方が良いでしょう。
また、設計事務所を選定する際にも以下の事に注意していただくと良いと思いますので参考にしていただければと思います。
A:過去の実績
B:得意とする設計内容
C:社内体制・外部委託先の体制
D:要望の再現性(人によっては自身の作品を作ろうとして、要望や予算を度外視してしまう方もいらっしゃいます。)
E:コミュニケーション(ニュアンスが合うかどうかも重要な要素になります。)