事例から学ぶ工事費削減の成功ポイントVol.3(工事費削減の取り組みが出来なかったケース)
当社が過去800件以上の工事発注のコンサルティングにお取り組みさせていただき、様々な事例がありました。事例から学べる工事費削減のポイントをご紹介したいと思います。
事例(工事費削減の取り組みが出来なかったケース)
商業施設への出店を検討していたお客様の事例です。
このお客様は当社に相談いただく前に、設計会社かつ施工も行っている会社に設計業務を委託していました。さらに、出店準備における工事計画のスケジュールも依頼していたのです。
しかしながら、よくよくお話を聞いてみると、この会社との打ち合わせは設計のイメージ図や平面図のみを用いてプランの確認と修正のみ行なわれている状況で工事開始のスケジュールなどを先延ばされていました。そして、見積を実施しなければいけない時期になっても図面一式が揃っていない状況だったのです。
その後、図面は出来上がっていないにも関わらず、なぜか工事の見積書だけは提出され、不透明な部分があるにも関わらずスケジュールの都合上、その会社に発注せざるを得なくなり、工事契約を締結されていました。
当社にご相談いただいた時にはすでに工事発注をしてしまっており、お力添えすることができませんでした。そのうえで、契約書を拝見してみると、適切な工事の進め方ができていなかったためか割高な工事費で契約されているのが見て取れました。
この事例から学べる要因は3点あります。
依頼する会社が得意とする工事であるか確認すること
設計会社や施工会社などの業務を委託する先が、何を主として事業活動している企業であるかは事前に確かめておくべき重要な視点です。
設計を得意としているのか会社なのか施工を得意としている会社なのか、さらには、施工でも何の工種を得意としている会社なのかを知った上で、業務を依頼しなければなりません。
設計業務も工事請負も許認可制ではありますが、協力会社が対応出来る様であれば、実態としてはその協力会社に丸投げしているケースが多々あります。その場合には、仲介マージンが発生しており工事費は割高になっている可能性がありますのでご注意ください。
設計と施工の役割は別として考えること
計画している工事の規模や考え方にもよりますが、設計と施工は分けて考えるべきことです。
設計事務所は発注者の意図している考えを代理人として具現化し、設計図書を作り上げます。施工会社はその設計図書をベースとし、建築物や内装をつくりあげていきます。
そもそも、設計と施工を依頼する業者選定の際には、価格面だけではなく、実績・対応・品質評価などを総合的に判断する必要があります。そのためには、仕様がしっかりと決まった設計図書を用いて、候補になる複数の施工会社から見積提案を受領する(相見積もりを実施する)ことが重要です。
この様な点を踏まえれば、設計と施工は役割が別であることを理解して、委託すべき業務の発注先を決める必要があります。
スケジュール管理は自社で行うこと
例えば、商業施設に出店するとなると、契約上で店舗オープンの期日が決まっていることもあります。
店舗を開業するために工事や採用、人材教育などがいつまでに行わなければならないのか明確になります。当社がご支援している中で感じるのは、そのスケジュール管理を、設計会社や施工会社に任せてしまう方が多いことです。
しかしながら、スケジュール管理を他者に任せてしまうと、意図的にスケジュールを調整されてしまい結果的に高い見積金額となる恐れがあります。なぜなら、工事費を適正にしていくには、施工会社の相見積もりを行っていくことが必要ですが、図面提出を意図的に遅らせて相見積もりを取得させない動きをする会社もいるからです。
以上のことから、実務的な業務を委託するのは当然のことではありますが、期限の設定は発注者自らが行い、その後も管理も行わなければなりません。
まとめ
今回、もっと早くに工事発注の進め方を知っていれば、高い工事費で発注せずに済んだかもしれない事例です。発注者としてスケジュールについてはイニシアチブが取れる環境を作っておくことは重要です。俯瞰して全体スケジュールを見ることができれば、どこに問題が発生しそうか分かるケースも多いので、これから工事をしようとされる方は、こういった点についても注意していただくことをお勧めいたします。