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飲食店舗の原状回復のポイントとは|店舗撤退・閉店の時の対応

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飲食店原状回復

飲食店舗を経営していると、状況次第で店舗運営が困難となり閉店しなければいけないこともあるかと思います。お店をクローズするとなると、借りていた物件を契約時点の状態に戻す「原状回復工事」が必要になります。飲食店における原状回復工事は、厨房区画のシンダーコンクリートの撤去や排気フード、スプリンクラーヘッド上向き下向きでの対応など特有な内容が多くあります。しかしながら、ポイントを理解し工事を適切に進めることができれば、工事費用を低減していくことはできます。本コラムでは飲食店における原状回復のポイントをお伝えします。

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民間住宅と事業用物件を借りた場合で原状回復の範囲は異なる

まず、民間住宅と飲食店舗などの事業用物件では原状回復の範囲が異なることを理解しましょう。個人が賃貸している民間住宅のケースにおいて、単に「経年劣化」や「通常消耗」された箇所は原状回復の対象から除外され入居者が負担するものではないと、国土交通省がガイドラインで定めています。

引用:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

一方、事業用の場合、原状回復工事は「契約した時点の状態に戻すこと」を指し、借主の責任において原状回復を完了する必要があります。また、賃貸借契約書にて貸主側の指定業者で工事を行うよう明記されているケースが多くあります。この場合、相見積もりができないことなどの理由から工事費は高額になるので注意が必要です。

飲食店舗における原状回復のタイプ(スケルトン工事、居抜き)

一般的に飲食店を原状回復する場合、「スケルトン工事をして引き渡し」、「居抜きの状態での引き渡し」、もしくは、「床、壁、天井がある状態で物件契約を行った場合はその状態に原状回復して引き渡し」することになります。どの様な状態にして引き渡しとなるかは、賃貸借契約書にある「原状回復」の項目を確認する必要があります。

スケルトン工事とは

「スケルトン渡し」、「スケルトン戻し」、「スケルトン返し」などと言われ、店舗内をコンクリート打ちっぱなしの状態(床、壁、天井などの内装が無いコンクリートの状態)にすることを指します。飲食店舗であれば、物件契約後に取り付けた厨房機器や排気ダクトなどがあれば、それら全ての設備が無い状態に戻すことになります。よく「原状回復工事=スケルトン工事」と誤解されることもありますが、「スケルトン工事」はあくまで「原状回復工事」の中の一種類のことを言います。

居抜きとは

居抜きとは、今ある内装や設備などをそのまま残し、後継テナントに引き継ぐことを言います。居抜き物件として退去できる場合は、原状回復の必要が無くなります。しかし、居抜きで入居した後に退去する場合は、原状回復義務により「スケルトン渡し」としなければいけない可能性があります。例として、「後継テナントが見つからなかった」、「そもそも居抜きでの退去が貸主側に認められなかった」などのケースが挙げられます。これらのケースでは、入居者が契約した時点の状態に戻す原状回復が必要になります。

飲食店の原状回復工事の主な内容

飲食店における原状回復工事の主な内容は、下記の通りです。これらの工事はスケルトン戻しの場合には発生しないものもあります。

・内装解体工事

客席やスタッフルームなどの内部空間を区切るための間仕切りやカウンターなどの造作物、厨房区画を解体する工事です。

・補修工事

料理に伴う油汚れやタバコで汚れた壁、床のタイル・カーペットの張替え、必要に応じて設備機器の塗装などを行う工事です。

・新しく設置した設備の撤去

照明器具や厨房機器、ケーブル関連など契約後に設置した設備や機器などを撤去します。

・設備など契約した時点の状態に戻す(移設する)

専用区画内に備え付けられている設備(防水、防災、換気、給排水など)を契約時点から移設・変更している場合、それらを元に戻す工事です。

・産業廃棄物処理

原状回復工事を実施した際に発生する産業廃棄物を処理するための費用です。食器類などは一般廃棄物として家庭ごみ、粗大ごみとして出すことができます。原状回復工事で出た木材や金属、プラスチックなどは産業廃棄物として、資格を持った業者さんに対応してもらう必要があります。

飲食業態の中でも原状回復費用がかかるタイプとは

・重飲食業態

喫茶店・カフェやドリンクスタンドといった軽飲食店よりも、焼肉店や中華料理店などの重飲食店は原状回復費用が高くなる傾向にあります。なぜなら、重飲食の業態は、大量に排気を必要とするため設備も性能が良いものが使われており、かつ、数量も多く使用されているためです。その分、厨房スペースも広くなる傾向にあるので原状回復の範囲も広くなります。また、油を使用する料理も多いと、ダクトや壁が汚れるため、修繕費用がその分かかることになることになります。

・大手系列や商業施設に入居している

 入居している物件のデベロッパーや管理会社が大手系列企業のケースやグレードの高い建物、商業施設の場合、原状回復費用は高額になりやすい傾向にあります。建設業界には重層下請構造といって、工事発注を受けた会社と実際に工事を行う会社との間に何社も会社が介在する構造となる習慣があります。大手系列やグレードの高い物件の場合だと、介在する会社も多くなり無駄な中間マージンが発生しやすくなるのです。また、工事単価自体も高い傾向にあります。

・B工事区分の設備を契約時から大きく変更している

その建物全体に影響を与える設備(分電盤や給排水、換気、防水防災など)は、B工事と呼ばれる区分で予め設定されています。飲食業態となると厨房エリアや客室に、換気や防水防災、給排水などのB工事に関わる設備を設置する必要が出てくることがあります。契約時の状態から設備の移設、増設が発生していると、退店時にそれらをもとに戻す原状回復工事が必要となるのです。さらに、B工事と呼ばれる区分は貸主の指定業者にて実施する工事です。相見積もりが出来ないケースがほとんどのため、提出される見積金額自体が高額となりやすいです。

ABC工事の詳細についてはこちらをご参照ください。

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153

・個室が多い、席ごとに設備を設置している、造作物が多い

例えば、高級感を演出するため個室を多くレイアウトしていたり、オリジナリティを出すために造作物を多く設置している場合、その撤去を行うための人工(作業員や職人の数)が必要となります。また、焼肉店のように各席に排気ダクトを設置し、既存設備であるスプリンクラーの移設などを行っていると、その分の原状回復も必要となります。

・搬入、搬出がしにくい構造の建物である

例えば、専有区画までの通路が狭い、空中階にあるがエレベーターが無い(もしくは小さい)など搬入・搬出がしにくい構造であると、時間がかかるため、見積の人工代に反映される可能性があります。

・入居している施設の都合により、工事を行う際の条件(制限)がある

特にショッピングセンター(SC)などの商業施設の場合は、日中は来場者がいるため工事を行う時間帯を制限され、施設が営業終了した後の夜間などに設定されます。さらに、施設内に映画館がありナイトシアターを実施している場合、さらなる時間制限が掛かることがあります。夜間作業となると、工事単価は日中作業よりも高くなります。さらには、搬入搬出のためのトラックの大きさも規定で決められている場合もあるので、どの様な条件での工事となるかは、事前に確認するようにしましょう。

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飲食店の原状回復費用を削減するポイント

・居抜きでの退去ができないかを貸主側と交渉する

居抜きでの退去となれば原状回復工事を必要としない、もしくは、最低限の内容で退去が可能となります。居抜きで退去するためには、居抜きで入居してくれる後継テナントが必要です。居抜きは貸主側としても、そのまま後継テナントが入居してくれると賃料収入が継続されるので提案として受け入れやすいものです。そのため、借主側においても後継テナントを紹介できるよう知り合いや不動産会社に声がけするなどといった動きをすると良いでしょう。テナントを見つけるためにはそれ相応の時間もかかるため前もって準備が必要になります。 

・工事範囲の曖昧さを極力無くす

原状回復工事の発注をする前に原状回復はどの範囲までとなるのか特定するようにしましょう。原状回復の範囲は賃貸借契約書に記載されているものの、各工事項目の細かい内容まで記載されているわけではありません。そのため、原状回復前の現場をお互いに見て、どの範囲まで借主側で工事を行うのか一つ一つ確認していく必要があります。もし、工事範囲について曖昧な部分があると、工事が始まった後に追加工事が発生してしまう可能性があります。また、工事内容に不明瞭な部分があれば、見積を作成する工事会社としても何かあった時に対応できるよう見積金額を上乗せして作成します。そのため、適切な見積を作成するためにも貸主と工事範囲を確認し、その内容について合意を得るようにすると良いでしょう。

・見積書の妥当性を検証する

見積書に記載されている項目の内容や単価、数量が契約書や設計図面に記載されている内容を見比べて検証しましょう。場合によっては、設計図面から読み取れる数量と見積書に記載されている数量を比べると過度な内容である場合があります。また、契約時点の設備に原状回復する場合、その設備のグレードが同等クラスのものであるか確認すると良いでしょう。

飲食店の原状回復工事において工事費を削減していくことは可能

例えば、「見積もりを取得したが高額だった」、「工事業者が指定業者である」、「提出された見積に対して交渉したが金額が下がらなかった」場合でも工事費を低減していくことは可能です。しかしながら、見積を査定し工事会社と交渉していくには、相応の知識や見識、経験が必要となります。その様な時には原状回復工事のコンサルティングも行う会社に依頼するのも一つの手段になります。

ナックスの飲食店における原状回復工事実績
https://nac-s.net/business/optimization/reduction/restoration-work/restaurant.html
この記事の監修
山本 隆広(やまもと たかひろ)
株式会社ナックス 代表取締役
建築関係の専門学校を卒業後、デザイン会社に入社。 その後、コスト削減のコンサルティング会社に転じ、企業の工事費削減に取り組む。2012年に独立し、2013年株式会社ナックスを設立。完全成功報酬型の工事費削減サービスや工事の計画を個別対応するトータルサポートのサービスを提供中。今までに中堅中⼩企業から⼤⼿上場企業様まで幅広く⽀援し、 取組実績数は800件を超え、平均削減率約23%を実現している。

画像:代表取締役 山本 隆広


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