テナント退去に伴う原状回復のポイント|店舗物件のタイプ別に解説

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原状回復工事  工事費削減  工事発注のポイント  B工事 

田辺 陽

B!

店舗事業やオフィス移転を行う方は、よく目にするであろう「テナント」という言葉。ひとえにテナントと言ってもいくつかのタイプがあり、テナントを退去する時に発生する原状回復の特徴は様々です。このコラムでは、テナント、店舗の原状回復のポイントについてお伝えします。


 目次

テナントとは

テナントとは、「その物件を契約し、借りている賃借人」という意味で、日本語では「店子(たなこ)」とも呼ばれています。しかし、実際の言葉の使われ方としては、「テナント=貸店舗、貸オフィス」という風に周知されています。一般的にテナントの募集は、ビルや商業施設(ショッピングセンターや百貨店など)、マンションなどで行われていますが、「借りてくれる人」や「営業する店舗」を募集しているという意味になります。

テナントの種類

テナントの種類は、使用形態によって「店舗物件」、「オフィス物件」、「倉庫」と大きく3つに大別されます。ただし、店舗物件と定められているテナントが、オフィス物件として使用できないかというと、必ずしもそうではありません。入居したいのに使用形態が異なる場合、オーナーに相談してみると良いでしょう。

・店舗物件

飲食店やクリニック、スーパー、ドラックストアなど小売業、飲食業などの業態がサービス提供し、不特定多数の顧客が来店することを想定しています。

・オフィス物件

会社に所属するスタッフが仕事をする事務所として利用するケースです。店舗物件とは逆に、特定の人が来ることを想定しています。

・倉庫

備品、商品の在庫などを保管しておくために使用されます。基本的には特定の人が使用することが想定されています。

テナント物件を退去する際に発生する原状回復義務

入居したテナントから退去する場合において、原状回復義務が発生します。原状回復義務とは、テナントとオーナーそれぞれが契約に基づいて物件を元の状態に戻すことです。

賃貸借契約書内や特約(主契約に任意で付加する特別な約束)に下記のように記載されています。契約書や特約には原状回復は、必ず行わなければならないこととして定められています。そのため、賃借人であるテナント側は、賃料の支払いを拒否できないのと同じく、原状回復自体を拒否することはできません。もし、原状回復費用が高額すぎるなど納得のいかない部分があれば、原状回復そのものを拒むのではなく、その内容を見直し、調整していく必要があります。

原状回復特約に関する例文

「本契約が期間満了、解約又は解除により終了するときは、終了日までに本賃貸借室内の物品等一切を搬出し、乙の設置した内装造作諸設備等を撤去し、本賃貸借室を本契約賃貸借期間開始日の原状に修復して甲に明け渡すものとする。但し、原状回復工事については、甲の指定する者に依頼するものとし、その工事に要する費用は乙の負担とする。」
「期間終了、解約、解除など事由名目の如何を問わず本契約が終了した場合、同時に、賃借人はその費用をもって、本物件に設置した造作、設備、物品などの一切を撤去し、かつ賃借人が賃貸人所有の財産に加えた変更、汚損などを修復し、本物件を原状に復して賃貸人に明け渡さなければならない。」

原状回復の範囲と期限

例文にある通り、店舗、オフィス、倉庫などテナントの種類に関わらず、退去の際には「使用による消耗、経年劣化は考慮せずに、入居した時と同じ状態に戻す」必要があります。そして、原状回復は賃借人が退去する日(明渡し日)までに完了しなければなりません。


店舗物件タイプに見る原状回復で気をつけるべきポイント

テナントの中でも店舗物件のタイプ別に原状回復を行う際に気をつけるべき点をお伝えします。店舗物件のタイプは、「ビルイン型店舗」、「路面店」、「商業施設」、「ロードサイド」の4つに分かれます。それぞれのタイプには特徴があり、原状回復を実施する時の視点がそれぞれで異なります。

◎ビルイン型店舗

複数のテナントが入居するビルの一画に入居する店舗のことを言います。ビルに様々な業種のテナントが入居するようであれば、多様な属性の集客を見込めることが特徴に挙げられます。そして、ビル側としても多様な店舗が入居することになることを想定して、各々のビルで館内規則があり工事のルールについて定めています。館内規則には、工事が実施出来る時間帯、場合によっては、防災や防水など建物関連の設備の取り扱いについてなどが記載されています。また、館内規則に記載されていなくとも、ビルごとに定められているルールもあります。例えば、搬入搬出ルートです。エレベーターが小さい、通路が狭いなどであれば、一度に運べる資材量は制限されるので、その分の人工代(作業員の工数など)が必要となり、工事費が割増になることがあります。

◎ロードサイド

ロードサイドは幹線道路や交通量が多い道路の沿線上に車、バイクでの来店を主に想定しています。その理由から店舗面積や駐車場も広く確保されていることが多いです。店舗の造りとしても独立店舗で大きく構えられていたり、ファサードなどの独立看板や壁面看板が大きく構えられていることが多いです。看板の原状回復は、足場を組む、高所作業が発生する等があると、場合によっては工事費が割高となります。また、店舗面積が広い場合は当然ながらその分、原状回復の量自体も多くなるので、工事費が大きくことになります。一方で、駐車場エリアには工事で使用する車両や機材を配置することができ、効率的に工事を進められるケースもあります。

◎商業施設

商業施設はいわゆるショッピングモールや百貨店など、物販店、飲食店、映画館、ゲームセンターなどが集まった施設のことを言います。商業施設の場合は、施設そのものの建築費が巨額となるため、運営の背景には大手デベロッパーやスーパーゼネコン、準大手のゼネコンなどが存在します。そのため、原状回復を行うとなった場合には、B工事に関わる指定業者の見積単価はその会社規模の大きさから高くなり、工事費は高額になるため注意が必要です。また、ビルインタイプよりもさらに多くの人数が施設に来店するため、工事の制限も施設の営業終了後で設定されているなど強く規制されています。商業施設は店舗物件タイプの中でも原状回復費用が高額になりやすいことを認識しておく必要があります。

◎路面店

道路に面した店舗のことを路面店と言います。駅前や商店街などにあることも多く、視認性が高いことが特徴に挙げられます。ビルイン、商業施設とは対象的なタイプとして用いられていることが多いようです。路面店舗前は、人通りの多い道路であることから、周辺環境に配慮をしながら原状回復工事を進めていく必要があります。ケースによっては、道路使用許可が必要になることがあります。また、路面店舗は他の店舗や住宅と隣接していることもあるので、工事に伴う騒音や振動が近隣に影響を及ぼさないよう、対応策を事前に検討しておく必要があります。工事を行う前から周辺住民や事業者とコミュニケーションを取っていると、円滑に工事が進められるようになるでしょう。

テナントの原状回復を適正に進めていくためのポイント

テナント、店舗の原状回復を適正に進めていく場合には下記のような点に注意して進めていくと良いでしょう。

・原状回復で負担する範囲を詳細に確認する

原状回復が行われる範囲は、契約書や特約、工事区分表などで記載されています。しかし、個別で発生する内容についてその全てを書面に記載することはできません。そのため、細かい個々の事情については賃貸人であるオーナーと協議し、原状回復の内容や範囲を確認していく必要があります。不透明な箇所があると、原状回復費用の見積も曖昧となり結果として追加工事が発生するなどして割高となってしまいます。その一つ一つに根拠を持たせながら、賃貸人のメリットがあるよう話をまとめていく必要があります。
原状回復の費用負担については、工事区分が重要なポイントになります。工事区分については下記コラムをご参照ください。

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153

・原状回復の見積内容(負担額)の妥当性を検証する

原状回復工事は、B工事と呼ばれる賃貸人が指定する工事会社で賃借人が費用負担する工事があります。相見積もりもできない指定業者で工事を行うB工事費用は高額となることがほとんどです。そのため、見積書や契約書類などをしっかりと検証し、なるべくテナント負担とならないよう内容を協議していく必要があります。協議を図っていく上でも単なる単価チェックに留まらず、利害関係を考慮した上での提案を準備し交渉に臨むことが重要です。

原状回復工事の見積書で確認すべき5つの点を下記コラムにまとめています。

原状回復工事の費用交渉に役立つ|見積書で確認すべき5つのポイント
https://nac-s.net/media/column/a326

まとめ

テナント、店舗といっても様々なタイプがあり、その特徴によって原状回復で気をつけるべき点は異なります。特徴を掴みながら、適正な原状回復工事を進めていくための要点を掴み、最終的には賃貸人、賃借人のお互いが納得できる形で退去を目指していけると良いでしょう。

テナント、店舗の原状回復工事において工事費を削減していくことは可能

例えば、「見積もりを取得したが高額だった」、「工事業者が指定業者である」、「提出された見積に対して交渉したが金額が下がらなかった」場合でも工事費を低減していくことは可能です。しかしながら、見積を査定し工事会社と交渉していくには、相応の知識や見識、経験が必要となります。その様な時には原状回復工事のコンサルティングも行う会社に依頼するのも一つの手段になります。

この記事の監修
山本 隆広(やまもと たかひろ)
株式会社ナックス 代表取締役
建築関係の専門学校を卒業後、デザイン会社に入社。 その後、コスト削減のコンサルティング会社に転じ、企業の工事費削減に取り組む。2012年に独立し、2013年株式会社ナックスを設立。完全成功報酬型の工事費削減サービスや工事の計画を個別対応するトータルサポートのサービスを提供中。今までに中堅中⼩企業から⼤⼿上場企業様まで幅広く⽀援し、 取組実績数は800件を超え、平均削減率約23%を実現している。


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