1. HOME
  2. 工事発注に関するお役立ち情報
  3. コラム
  4. 原状回復工事の費用交渉に役立つ|見積書で確認すべき5つのポイント

原状回復工事の費用交渉に役立つ|見積書で確認すべき5つのポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
原状回復の見積書

個人であれば引っ越しを行う時、法人であればオフィス移転やテナントを退去する時に発生する原状回復。原状回復は物件を借りた時の状態に戻すことを言います。当社にも「原状回復費用が高すぎる」、「指定業者から見積もりが届いたが内容がよく分からない」などといった原状回復に関するご相談をよくいただきます。原状回復を含む各工事にはA工事、B工事、C工事という工事の範囲を設定する考え方があります。特にB工事と呼ばれる工事は原状回復工事の多くが該当し、費用が高くなる傾向にあります。今回は高額になりがちな原状回復工事を交渉していくために必要な見積書の確認するべきポイントについてお伝えします。

原状回復工事チェックリスト無料ダウンロード

原状回復費用に相場はあるのか?

原状回復をどの範囲でどこまで行うかは、契約書や予め取り決められた仕様書に基づいて、個々の物件で設定されます。そのため、原状回復における各項目個別での単価の相場感はありますが、原状回復工事全体における坪単価の相場が、〇〇円位であるとは一概に言えないものです。
特に法人の場合は、内装でオリジナリティを出すため造作や設備にこだわったり工夫を凝らしたりすることもあります。内装の都合で空調や防災設備などの既存設備を、物件契約時から別の場所へ移設すると原状回復の範囲は大きくなり、原状回復費用も必然と高くなります。この様な点から、原状回復全体の費用感を知るには、個別の状況によるため実際に見積もりを取得するしかありません。

工事費の減額交渉していくために必要なこと

しかし、原状回復の見積を取得した後に工事費が高いからと言って、むやみやたらにオーナー側と交渉しても「工事費が下がらない」、もしくは「下がっても期待したほどではなかった」ということがよくあります。適切に工事費を削減するには、交渉を行う前にしっかりと準備をする必要があるのです。
その準備の一つが、「見積もり内容が適正であるかの検証」です。もし、見積内容が適正ではない箇所があれば、その内容をもとに工事会社側と建設的に話をする切り口となります。しっかりとした根拠に基づき話し合うことができれば貸主、施工会社側もそれに応えてくれるでしょう。それでは、見積内容を検証するにはどうしていくと良いのでしょうか。見積もり内容が適正であるかどうかの検証は、見積書や契約内容、設計図面などから総合的に照らし合わせながら確認する必要があります。

原状回復工事の見積書で確認すべき5つのポイント

原状回復費用の見積金額が高い場合は、前向きに交渉していくことで低減していくことが可能です。それでは、どういった点に注意して見積書をチェックすると良いのかポイントをお伝えします。

①見積内容と設計図の内容に整合性があるか確認する

見積書に記載されている項目の内容や数量(例えば、電気工事の箇所であれば配線のメーカーや長さなど)は、基本的には設計図面で描かれている寸法や面積を読み取り、それらの情報を基に積算しています。しかしながら、設計図面から読み取れる寸法や面積よりも見積書の数量が明らかに過剰になっていることがあります。この場合、適切な寸法、面積に見積を修正してもらうことで費用を低減できる可能性があります。

②見積にある人工代と作業量が妥当であるか確認する

見積に記載されている人工代と設計上で想定される工事の作業量が妥当であるか(整合性があるか)確認すると良いでしょう。例えば、設計図から想定される工事に必要な資材量と見積に記載されている資材の搬送費や搬入費(作業員数や稼働日)に妥当性があるかを確認してみましょう。必要な資材量に対して、過剰な作業員や稼働日を見積もっている場合もありますし、1回で済む資材の搬送を2回、3回と分けて見積もって人工代を過大に見積もってくるなどのケースもあります。

原状回復工事実績ページ

③設備や部材の項目が契約時のものと同等のグレードであるかを確認する

法人オフィスや店舗における原状回復の基本的な義務は、契約時点の状態に戻すことです。そうであるにも関わらず、設備や部材が契約時のものよりグレードアップしたスペックで見積もられている場合、必要のない費用を支払わされる可能性があります。そのため、見積もりに記載されている設備や部材が契約時と同等クラスのメーカーや品番であるか把握するようにしましょう。もし、グレードが高い場合には、この点を指摘することによって見積もりを適正にしていくことができます。なお、スケルトンに戻す場合においては、物件内に原則、何も無くなるためこの項目は考慮する必要はありません。

④見積内容と工事区分表に記載された内容に間違いがないか確認する

工事区分表とはA工事、B工事、C工事それぞれの工事がどこまでの範囲に該当するかを記載した書面のことです。工事区分表で割り振られている範囲と見積内容の範囲に間違いがないか確認すると良いでしょう。当社が今までにご支援した案件で、工事区分表ではオーナー(貸主)の費用負担であるA工事と設定されたものが、テナント(借主)の費用負担となるB工事として設定されていることがありました。この場合、しっかりとオーナー側に工事内容を指摘していくことが必要です。別のケースとして、工事区分表で予め工事範囲が設定されていない工事が発生するという場合もあります。例えば、入居時にはなかった防災設備などを退去する際に取り除くかどうかが設定されていなかった等です。その場合には、その防災設備を残すことが、後継テナントが付きやすくなるなど施設側にメリットがあるかなど根拠を持って交渉をすることで、テナント側の負担にならないよう計画を組める可能性があります。

A工事、B工事、C工事についての詳細は下記コラムで解説しています。

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153

⑤各項目の単価をチェックし相場感からして妥当であるかを確認する

B工事は特に貸主(オーナー)側の指定業者で実施する工事であることから、相見積もりを行って比較させていく競争原理が働きません。指定業者も受注がほぼ確実であることから、少しでも利益を獲得しようとして見積は高額になりがちです。費用詳細は専門知識や経験が無いと判断ができないところもありますが、壁紙やカーペットの材料費はインターネット上の情報から把握することもできるでしょう。単価の相場感を把握することで、根拠を持った交渉ができるようになります。

まとめ

原状回復工事の計画を立てていくということは、その物件の退去時期も決まっていることが多いでしょう。原状回復費用を適正にするためには、退去までのスケジュールを適正に組み、工事内容をしっかりと精査していくことが重要です。その中でも見積内容が適正なのか高いのかを査定するためには、専門的な知識や業界への深い理解が必要となります。自社でご判断が難しい場合には、外部のアドバイザーに確認するなど第三者の意見を取り入れるのも一つの手段です。

この記事の監修
山本 隆広(やまもと たかひろ)
株式会社ナックス 代表取締役
建築関係の専門学校を卒業後、デザイン会社に入社。 その後、コスト削減のコンサルティング会社に転じ、企業の工事費削減に取り組む。2012年に独立し、2013年株式会社ナックスを設立。完全成功報酬型の工事費削減サービスや工事の計画を個別対応するトータルサポートのサービスを提供中。今までに中堅中⼩企業から⼤⼿上場企業様まで幅広く⽀援し、 取組実績数は800件を超え、平均削減率約23%を実現している。

画像:代表取締役 山本 隆広


合わせて読みたいその他関連記事はこちら

原状回復工事とは|法人向けに用語や相場・単価・工事費の削減するためのポイント
https://nac-s.net/media/column/a96

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153

原状回復、現状回復、現状復帰、原状復帰、原状復旧の用語を丁寧に解説
https://nac-s.net/media/column/a314

オフィス移転・事務所移転の費用とは?見積の削減ポイントも紹介
https://nac-s.net/media/column/a329

飲食店舗の原状回復のポイントとは|店舗撤退・閉店の時の対応
https://nac-s.net/media/column/a331


工事費削減サービス資料ダウンロード

原状回復工事チェックリスト無料ダウンロード
  • このエントリーをはてなブックマークに追加