田辺 陽
収益一棟物件プロジェクトの成否は建設会社で決まる、といっても過言ではありません。昨今、建材費の高騰や現場作業員の減少に伴い工事費が高騰し、計画中の新築工事案件が中止や延期となるケースが増えています。
さらに建設業界では働き方改革が進み、工事スケジュールの調整に苦慮している状況です。この様なゼネコン側に売り手市場とも言える状況で優良な建設会社を見つけ、条件交渉をしていくことは非常に困難を極めます。
今回、ナックスは収益一棟物件プロジェクトを進められていたデベロッパーのT社様をご支援させていただきました。プロジェクトを主導されたN.T様に支援にあたっての詳細や進めていく中でどうような問題があったかなどについてお話を伺いました。
ナックス支援前の課題 |
・プロジェクト用に新規で土地を購入し着工準備していたが、建設会社側の都合で頓挫してしまい代わりとなる会社を急ぎ見つけなければならなかった ・プロジェクトの特性上、当社社名を出しての直接的な声掛け先は限定せざるを得なかった ・土地を購入済みであったため、融資等の関係もあり早急に建設会社を見つける必要があった |
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ナックスを導入した目的 |
・プロジェクトの事業化を実現させるため ・広く適切な建設会社の情報を収集し、速やかに検討を進めるため |
-N.T様の部署について教えていただけますでしょうか。
N.T様:
私の部署はマンションの開発業者のような形で少人数ながらも、土地の仕入れから建築、その後、投資用としてファンド等に売却まで行っています。
一言でいうと「賃貸マンションのデベロッパー」のような立ち位置です。
-N.T様は、工事に関わる業務のご経験やご経歴はありましたか?
N.T様:
もともとは、上場している土木関連の建設会社に在籍していました。土木をやっていると建築も自然と付帯するので一通りは関わっていました。建築系の資格もいくつか持っています。
その後、大手不動産会社に10年ほど在籍し、事業を統括するポジションにいた後、現在の会社に参画しました。工事の経験でいうと、建築に特化しているということではありませんが、大枠としては理解し事業を進められるような経験は積んできているかなと思います。
-今回、お持ちの土地でマンションの新築工事を行おうとされたところ、途中で頓挫されてしまい、新しい建設会社を探されているところ弊社にお声がけいただきました。
そこから弊社ご支援により、予算やスケジュールに合う建設会社をアテンドさせていただくことができ、収益的にも無事にゴール達成できたという経緯かと思います。頓挫してしまった当時は、どのような課題を感じていらっしゃいましたか?
N.T様:
建築費が以前に比べ1割〜2割くらい高くなっているのは、概算の見積を取っていた当初から感じていました。ゼネコンなどであれば集中購買でコストを押さえられると思いきや、働き方改革が始まり大手は大手でしっかり対応しなければならなくなりましたよね。
働く時間が少なくなると、その分追加人員が必要になりコストも上がります。
-最近は現場作業員数も減少し人材不足の流れから、さらに建材費が高騰しているため、建築費は上がり続ける状況です。
N.T様:
そうですよね。我々としては工期と売上はセットなので、働き方改革で工期が長くなり、建築費も上がってしまうのはとても深刻な問題です。
我々がやろうとしている事業は大規模ではないので、建設会社も積極的に受注したい規模であるかというとそうではないだろうという認識は持っています。実際に建設会社に声がけしてみると、「その規模じゃやらないよ」と言われました。
しかし、見つけた土地を塩漬けにしておくわけにはいかないので、我々も少ない人数の中、スピード感を持ってプロジェクトを進めていかなければなりません。建設会社を探すにもどのように動いていくのが良いのか模索している状況でしたね。
-課題は一つではなく、内的、外的要因が複雑に絡んでいるような状態だったのですね。元々見積取得されていた建設会社はどのように見つけてこられたのですか?
N.T様:
前職でコンパクトマンションの構想があり、当時、社内評価が高かった会社に声がけしました。その建設会社の人とは、仕事上の付き合いはなかったのですが、個人的に付き合いがありました。その様な関係だったので、その方もコストを合わせて段取りをしてくれました。我々も与信などをみていましたが、途中で暗礁に乗り上げてしまいました。
-なるほど。そこから新たに建設会社を探す動きになったのですね。御社はどのように探されていたのですか?
N.T様:
すでに仕入れした土地がある中でしたので、慌てて条件にあう建設会社がないか探しました。今まで在籍していた会社の役員クラスに個人的に相談したりなど、どうしてもつてを頼っての声がけになります。
あまり無差別に声がけしていくと、知らぬところにも知れ渡ってしまい、「あそこの会社は困っているようだ」と変な噂が広がっても困りますから。なので、ある程度、信頼が担保された付き合いのある会社に声がけしていくことになりますよね。あとは金融機関にも相談していました。
-その様な中、ナックスへは金融機関様経由でお話をいただきました。ナックスを導入検討するにあたりサービス説明を受けて、第一印象はいかがでしたでしょうか?
N.T様:
我々の案件は、ナックスさん従来の「工事の計画を立てる」、「工事費を削減していく」といったスタンダードな取組とは少し違ったかなと思います。
ただ、コンサルタントの方ともお会いし取り組み方にも工夫をいただいた形で提案いただき、ナックスさんと組んだ方が良いのだなとシンプルに思いました。ナックスさんに支払うフィーを換算してみても、プロジェクトを成立させられることが分かったので、フィー自体を高いと感じることは全くありませんでした。
-ありがとうございます。ナックスをご評価いただいた点について教えていただけますでしょうか?
N.T様:
プロジェクトで成功と定義できる売上をあげられる状態まで進めてもらったので、本当に感謝しています。我々だけで建設会社を探すのは八方塞がりの状態で慌てていたところでしたからね。
正直に言うと、条件を獲得いただいた建設会社の名前を最初に聞いた時に「どこの会社だろう?大丈夫だろうか」と思ったのも事実です。しかしながら、ナックスさんから詳細に説明してもらい、しっかりと着実に準備されている建設会社さんだなということを理解することができました。
-なるほど。我々はネームバリューではなく、お客様にとって「最適な建設会社はどこか?」の視点でアテンドしますので、世間的に名が知られていない建設会社であることがあります。その他に、ナックスと共にして良かったという部分はありましたか?
N.T様:
ええ、いくつかあります。
まず1つ目は「建設会社の数を当たれた」ということです。先にも話した通り、我々が大っぴらに探してしまうと周りから良くはない評判が立ってしまう可能性があります。そこをナックスさんが黒子的な動きをとってくれたので、多くの会社に打診することができました。
次に、「コミュニケーションを密に取れた」ことです。ナックスさんとは定例での報告会も組んではいましたが、何かしらの進捗があればすぐに共有してくれていました。そして、アプローチ中の建設会社をネームアップしてくれていたので、お互いにアプローチをしている先が被った場合でも適切に対応することができました。社内的、社外的な調整においても正しい動きができていたと思っています。
3つ目が、「建設会社との間に入り、仲介役の様な形で入ってもらえた」ことです。どうしてもセンシティブな情報を取り扱いながら、お互いの間合いも分からない中でしたので、建設会社に確認がしづらい内容もありました。そこを、ナックスさんを通して確認することができた、というのはあります。ナックスさんの担当コンサルタントの方は、建築の知識も豊富ですから通訳のように対応いただくことができました。
その様なコミュニケーションが取れたのも、コンサルタントの方と信頼関係ができていたからこそだと思います。だいぶストレートに状況を共有や報告できていましたからね。建設会社の与信を確認するにしても、ナックスさんからなぜこの様な与信になっているのかもご説明いただいたのは良かったです。
-そうでしたよね。建設会社探しをする前から、コミュニケーションを取らせていただき、御社の状況なども理解させていただいていたので、だいぶ連携できた状態で我々も活動することができたと思います。
N.T様:
ナックスさんと信頼関係を築けていたからこそ、紹介いただいた建設会社との契約に至れたと思います。そう考えると、今回契約した建設会社を、仮にナックスさん以外から紹介されたとしても契約に至らなかったのではないかなと思いました。ただ単に工事実績を示されても何の担保にもならないですからね。
与信という定量的な視点も重要ですが、やはり意図を汲み取ったうえで紹介してくれるということも大切です。ナックスさんからは適切な付帯情報を添えて紹介いただいたので、安心して話を進めていくことができました。
契約する前に、相手側の会社さんには一度はお会いして話を進めさせていただくのですが、その際も同席してもらい安心して進めることができました。
-ありがとうございます。逆に、ナックスの支援中に何か困ったことはありませんでしたか?
N.T様:
全くなかったですね。現在、工事も進行していますが特別、困ったことはないです。いまのところスケジュール通りに進行しています。建設会社とのやり取りも現状、何も問題ないです。
-無事に工事も進行しているようで良かったです。
N.T様:
ええ、我々も竣工が楽しみです。我々のやっていることは、どうしても良い建設会社がいるかいないかでプロジェクトの成否が決まります。今後、同じ様なプロジェクトを企画していく中で、今回、条件獲得いただいた優良な建設会社さんを継続して活用できることもメリットだなと感じています。
-そうですよね、プロジェクトは今回限りのものではないですし。会社としても優良な業者郡をつくることでリスクヘッジができていくと思います。
N.T様:
部署としては建築コストが高騰する中で継続的にプロジェクトを実現していくのはなかなか厳しいものがありますが、我々としても将来的な計画というものは立てています。ポテンシャルが高い立地であればニーズはしっかりあるということは確かです。
会社としての資金繰りなど色々な要素があるものの、私達のぶれない方針で言いますと、「良い土地でマンション事業をやり続ける」ということです。そして、マンションだけでなく他のアセットへのアプローチも視野に入れながら検討していきたいと考えています。
いずれにしても、プロジェクトを進めていくには建設会社は必要になります。今後もナックスさんと連携しながら進めていきたいと考えていますので、是非ご支援をお願いできればと思っています。
―こちらこそ今後とも宜しくお願いします。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
取材日:2024年9月某日