田辺 陽
オフィス移転は頻繁に発生するものではありませんが、会社規模も大きくなれば移転プロジェクトの規模やこなさなければいけない量も大きくなります。現実としてはご担当の方は日常の業務に追われて移転プロジェクトに時間を割くことが出来ずに、ワンストップでオフィス移転を支援する会社に丸投げすることもあるようです。そのこと自体は悪いことではありませんが、気をつけて進めていかなければ後々問題を抱えることにも繋がってしまいます。
このコラムでは、オフィス移転をするにあたり、ご担当者様が陥りやすいポイントを3つ紹介したいと思います。
オフィスの移転は計画が上がってから移転が完了するまでに数ヶ月を要します。工程としては、プロジェクトのコンセプトや移転先の内装デザイン、平面図等の作成から進み始めるでしょう。計画が出来た段階で社内の各部門からの要望を聞き、デザインや平面にその要望事項を反映していくことになります。あるある話しではありませんが、要望を受けて修正した図面を再度各部門にフィードバックしていくと、また違う要望が出てきがちです。こうなると、図面の修正を幾度となく重ねることになり工数もかかり後々の工程に影響が出てしまいます。そうならないためにも、計画のスケジュールを項目を細かくし、フィードバックの期限や回数を設定し優先度をつけながらプランを作って進行していく必要があります。
移転プロジェクトの担当者の方が、日常の業務をこなしながらオフィス移転の業務を兼任する場合、発生する負荷は相当なものになることは必至です。その様な方をターゲットとして、「オフィス移転をワンストップで、トータルで支援します。」というキャッチコピーの移転プロジェクト支援サービスのページや広告をしばしば見かけます。この様なサービスの支援内容を端的にいうとオフィス移転業務を一括で代行する、というものです。しかし、負担が減るという理由だけで工事スケジュールや工事費の見積取得も任せてしまった場合には、工事費の見積金額が高額になることがあるので注意が必要です。なぜならば、これら支援会社は他社相見積もりを行わずに、繋がりのある工事会社を紹介しようとします。こういった場合は、工事スケジュールも握られているため、工事費用が高いままに計画が進められてしまう状況となります。全体のマネジメントとしてはオフィス移転をする側が行なわなければなりませんので、原則としてはアウトソーシング先に一括で任せると言う安易な判断はしない方が良いでしょう。
とにかく格好の良い内装にしたいとデザインや設計をメイン業務として行なっている工事会社にプランニングや図面を依頼した場合のケースです。悪意があるデザイン会社は計画的に打合せを無駄に多く実施したり、プラン修正を重ねて図面完成を遅らせることがあります。結果として出来上がった図面を基に内装工事の相見積をしようと考えても、見図面一式が提出されないという場合があります。そうなると、工事費の見積は取れないまま移転日だけが近づきデザイン会社に工事まで相談・依頼せざるを得ないようになります。デザイン会社としては、相見積もりを取る必要のない工事計画のため工事費を高く設定することができます。この様な事態にならないようにする対策としては、プロジェクト管理の中で図面の提出期限を明示し促す他ありません。
オフィス移転プロジェクトを進める上で、社内の負担をどの程度にして進めるかはあくまでもその企業の考え方になります。ただし、共通して言えることとしては、移転業務を適正な内容で適正な価格で実施するには、ワンストップでアウトソーシングするのではなく、自社が中心となりマネジメントをしていただく事をお勧めします。