田辺 陽
当社が過去800件以上の工事発注のコンサルティングにお取り組みさせていただき、様々な事例がありました。それらの事例から学べる工事費削減のポイントをご紹介したいと思います。
今回、飲食店の出店をご支援した事例を紹介します。比較的大きな店舗を商業施設内に出店を計画を立てられていて、内装工事と厨房機器を分離発注で検討されていました。厨房機器については内装の設計事務所から紹介を受け、厨房設備士から無料で厨房の設計と機器選定・メーカーの紹介をされているという事で話しが進んでいました。これら3社ほどのメーカーから見積書が提出されていたところで当社に相談があり、内容を確認させていただきました。すると、3社とも僅差での提案されていて、かつ相場よりもはるかに高い単価設定での見積内容でした。お客様からの依頼で当社が別の会社から同じ内容で見積を取得すると、元々提案があった3社の金額から40%程の価格の見直しができたのです。後日、お客様が内装の設計事務所へ確認したところ、その厨房設備士はメーカーからのキックバックを定めていたとの話しがあり、その分が工事費用に上乗せされている可能性があるとのことでした。
この事例から学べる成功要因は3点あります。
設計や見積依頼・提案の回収等は実務として人が動く事になります。それは絶対的に人件費が掛かるものであり、無料であったり極端に安価であるという事は考え難いものです。その様に人件費を度外視した話しの場合にはどこかでその人件費分以上が見積金額に反映されていますので、ご注意下さい。
図面を基に相見積を行なう事が一般的ですが、その際に最良の方法を考えて実務として動かないといけないのは発注者自身です。その業務を安易に捉えすぎていると、知らない所で様々な仕様の追加や設定がされてしまいます。そのため、適切な会社を探し出し、最良の提案を選択することに注力するようにして下さい。
建築業界は古くからあり、高度成長期にはその成長を牽引する程の業界でした。その中で談合が起こったり、時には官製談合が起きたりしてきました。取り扱う金額が高額になるだけに利害関係者も多くなり問題もたくさん起こしてきました。建設業界はそんな環境にさらされた業界だと言う事を再認識した上で、自社の計画を良い形で実現出来るかを考えて頂ければと思います。
この事例は、設計がキックバックを施工会社から受け取ろうとしていて、それを未然に防ぐ事が出来た良い事例です。ただ現実には、正解が分からないために言われたままに発注をしてしまっている工事は多いと思います。今一度、自社のこれまでの条件獲得を振り返っていただき、今後の工事の進め方を見直すきっかけにしていただけたらと思います。