マンションなどに必要な修繕計画4つの目的

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工事発注のポイント  大規模修繕工事 

田辺 陽

B!

人々の快適で安全な居住環境・職場環境を確保し、建物の資産価値の維持・向上を図るためには、建物の経年劣化に対して適時適切な修繕工事を行うことが重要です。
そのためには、次に掲げる事項を目的として建物調査診断を実施検討し、目的を踏まえた長期修繕計画を作成することをお勧めします。

通常、長期修繕計画はマンションで計画される事が多いですが、商業施設やオフィスビルなどでも同じことが言えます。適切に管理された長期修繕計画はテナント誘致力をアップさせるためのバリューアップ工事とも言え、資産価値の向上も視野に入れる上では必要不可欠であると言えます。

もっと修繕計画の目的について深堀りをしていきましょう。今回は修繕計画の目的における4つのポイントについてお伝えします。

 長期修繕計画4つの目的


将来見込まれる修繕(改修)工事の内容、時期、概算費用を明確にする

修繕工事を実施する時期は、一般的に新築から10〜15年周期と言われております。建物の状態や構成する部材、設備の耐久性などを考慮し、必要だと思われる工事内容とそれに伴う工事費用の算出を行う必要があります。修繕は、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に実施していることが前提条件とし、建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持・回復させることを目的としています。



修繕工事実施に伴う、修繕積立金の根拠を明確にする

修繕工事にかかる費用は高額になるため、「修繕積立金」として毎月住人から徴収して積み立てを行い、その積立金から支払わられることとなります。
そのため、前項で明確にした工事の内容、時期、概算費用を元に積立金の金額を決定する必要があります。積立金が不足してしまう場合、追加費用を徴収する可能性もあるため、適切な金額設定が大切です。商業施設やオフィスビルの場合でも建設時に長期の修繕計画を立てることで毎年の企業の予算取りも容易と考えられます。
※金利、消費税の税率、費用の価格変動などは作成時点において想定した条件を明示します。



修繕(改修)工事に関する長期計画について、あらかじめ合意しておくことで、修繕工事の円滑な実施を図る

修繕工事について住人もしくはテナントに合意を得ることは円滑な工事を実施する上で重要になります。調査診断結果や計画に基づく修繕工事内容や安全計画・施工計画などの説明が必要です。

 


長期修繕計画の見直しを行う

長期修繕計画は、対象不動産の経年劣化の状況やメンテナンスの状態を反映するために、一定期間(少なくとも5年)ごとに定期的に更新する必要があります。建築の専門家もしくは建物診断の専門会社に依頼をする事で、見直し時に建物の状況や実態に沿った工事範囲・工事内容の選定を行い、より精度の高い修繕計画とする事が好ましいです。
※長期修繕計画は、20~30年先までの推定修繕工事の内容、時期、費用等を概算で求めていますが、策定後の技術の発展や経済・社会情勢などの変動要因はカバーしていません。

まとめ

海外ではスクラップアンドビルドではなく、建物を修繕して長期間に使っていく文化があります。そのため、修繕計画や修理履歴を重要視している国があるほどです。適切な計画の元で適正に管理された建物は築年数の割に新しく見え、かつ発注までに時間を掛けて仕様決定・施工業者選定が可能になります。また、同工種を効率的に発注ができれば建物に掛かる全体的な費用(LLC)を圧縮する事につながります。計画もなく、突発的な工事ばかり発生し、割高な費用が掛かっている状況から抜け出す一つのツールになるので、作成してみるのはいかがでしょうか。

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