B工事の相場と取組方法で気をつけるべき点とは

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田辺 陽

B!

イオンモールやららぽーとなどの大型商業施設、東京ミッドタウンや丸の内ビルディングなどの大手不動産ディベロッパーが所有しているオフィスビル、店舗テナントでの出退店・オフィスの入退去時に施設側(貸主)が業者指定することが多く見受けられます。その多くは指定業者として施設を新築したスーパーゼネコンが担当しているか、スーパーゼネコンの下請けの位置づけで施設所有者自らもしくは子会社が担当しているのです。

A工事、B工事、C工事の工事区分

もともと工事においては、A工事、B工事、C工事という概念があり、どの工事を誰が発注し費用をはらうかなどで工事区分が分かれます。それぞれのABC工事をまとめると、下記表のようになります。
先述した指定業者による工事の場合は、B工事と呼ばれる区分として扱われます。

  A工事 B工事 C工事
工事会社の指定 オーナー オーナー テナント
工事会社への発注 オーナー テナント テナント
工事費用の負担 オーナー テナント テナント
主な対象範囲
※対象範囲は物件により異なります
施設の共用部
エレベーター、共用トイレ
共用通路
標準的な設備
分電盤
給排水
防水防災設備
厨房給排気
空調設備
内装工事
什器備品
照明器具
電話工事

 ABC工事の詳しい内容は下記コラムをご参照ください。

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153 

B工事の相場は高額になることが当たり前

B工事と呼ばれる工事は、ゼネコンが行う様な工事の規模・内容ではない小さい規模である事がほとんどです。また、B工事は通常、相見積もりが取れず競争環境が働かない状況のため、工事費が一般的な相場の2倍・3倍となるのが当たり前です。

弊社がとある企業のオフィスビルに入居する際、パーテーションに関するB工事のご支援をさせていただいた例をご紹介します。施設側の指定業者では2,000万円の見積もり金額が提出されましたが、テナント(借主)側で同じメーカーの同じ製品で取得した見積もりは800万円という金額でした。なんと1,200万円もの金額差があったのです。また、六本木一丁目にあるビルの50坪の飲食店原状回復工事では、指定業者の見積り金額は3,000万円で提出されましたが、テナントで取得した見積もりは700万円というものでした。いかにB工事の金額において相場とのギャップがあるのかお分かりになるかと思います。

高額なB工事においても適正していくことは可能

B工事においても、「スケジュールを適切に組む」、「工事区分と見積内容を検証する」、「基本設計の段階でB工事区分を意識して作成する」「指定業者の考え方、背景を理解して交渉する」など商流や状況を考慮しながら進めると工事費を低減していく可能性があります。
当社においても、多くのB工事費用において、平均23%の削減していくことができました。



一例として、大手企業のテナントが行っていた対策をご紹介いたします。

 大手企業のテナントが行っていた対策


賃貸借契約書の締結を遅らせる

B工事は設計が終わらないと積算されません。そのため、金額が想定しづらく仮に事業計画を策定しても、そのイニシャル費用をも大幅に超えてしまい投資回収が難しいという状況も発生します。賃貸借契約書を締結した後にB工事の費用が高額で提出されたが交渉ができない。もしくは、交渉しても下がらないとなると経営自体が圧迫されることになります。
そのため、賃貸借契約書の締結自体をできるだけ後ろに伸ばし、B工事の費用が納得できる水準にならない場合は最悪出店などをしない。との判断が可能な期間を作って交渉をする企業様もいらっしゃいました。こうすると、貸主側からB工事業者に対して口を聞いてくれることもあります。

入居時に退去する際のB工事費用を提出させる

入居する時にあまり考えたくはないことですが、退去する際に必要なB工事の原状回復費用を算出する企業様もいらっしゃいます。退去時になって敷金以上の原状回復費用の見積もりが出てくることは多々あります。入居する前に出口戦略の一つである撤退まで視野に入れて、B工事費用を提出してもらう交渉が出来れば①の対策と併用する事で相当の削減効果を見出せる可能性があります。

不動産ディベロッパーの役員と連携

B工事の見積もり自体は施設の担当者や工事部門の担当者といった現場レベルでやり取りで提出されます。施設側の企業とどの程度のリレーションがあるかどうかにもよりますが、関係構築できている場合には不動産ディベロッパーの役員などの上層部へ相談をする事も効果的です。現場の方々も柔軟に対応できる状況であればぜひ活用いただきたい対策です。小さな金額で相談するべきではないと思いますが、工事金額は大きくなることも多いため、ここぞという時には効果を発揮する方法です。

あくまでも大手企業様が独自の判断・リスクの許容内で行っている方法ですので参考としていただき、置かれている状況・関係性・金額を考えた上でB工事の交渉をおこなってください。



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