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原状回復、現状回復、現状復帰、原状復帰、原状復旧の用語を丁寧に解説

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原状回復、原状復帰のイメージ

原状回復とは、現状回復とは

「原状回復」は、「初めの状態に戻す(回復する)こと」であり、原状回復工事は「物件契約をした時点の状態に戻すこと」を意味します。「現状回復」は、「今の状態に戻す(回復する)こと」言葉の意味が成立しておらず誤用であると言えます。

オフィスを移転する、店舗物件から退去する、引っ越しするなどの時に「ゲンジョウカイフク」という用語をお聞きになられたことがあるのではないでしょうか。「ゲンジョウ」という文字を漢字変換やWEB検索すると「原状」や「現状」といった漢字が出てきてます。また、「原状回復」、「現状回復」、「原状復帰」、「現状復帰」、「原状復旧」といった様に似たような言葉が多くあり、それぞれがどの様な意味を持つのか一見分かりにくいものです。今回はそれぞれの言葉の意味について解説し、さらに法人向けによくあるトラブルと対応内容ついてお伝えします。

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「原状」と「現状」の違い

先にお伝えすると、賃貸不動産などで一般的に使用される言葉としての「ゲンジョウ」という漢字は「原状」が正しいです。例えば、「原状回復」、「原状復帰」という用語で使用されます。

「原状」と「現状」の意味については下記になります。

 言葉 原状 現状
意味 初めにあった状態。もとのままの形態。 現在の状態、ありさま。

引用:原状:goo辞書 、 現状:goo辞書

これを見ると「原状」と「現状」では意味がだいぶ違うことが分かります。次に、「回復」や「復帰」、「復旧」の意味について確認してみましょう。

 言葉 回復 復帰 復旧
意味 もとの状態に戻ること。また、もとの状態に戻すこと。 もとの位置・状態にもどること。 壊れたり、傷んだりしたものを、もとの状態にすること

引用:回復:goo辞書 、 復帰:goo辞書 、 復旧:goo辞書

「回復」と「復帰」は、ほぼ同じ意味であることが分かります。「復旧」の意味は条件付きであり、先のカイフクの言葉とは少し意味が異なるようです。

「原状回復」、「現状回復」とは

それでは、上記で確認した漢字を組み合わせて意味を確認してみましょう。「現状回復」もしくは「現状復帰」は、「もとのままの状態に戻ること」という意味となり成立しないものとなってしまいます。

一方、「原状回復」、「原状復帰」は「最初の状態に戻すこと」という意味が通じていることが分かります。会議室などのスペースを利用した後に、「ゲンジョウカイフクする」と言ったりしますが、これは「原状回復」のことであり「会議室を利用前の状態に戻しておくこと」という意味になります。工事においては「その物件を借りた時の状態に戻すためのことを「原状回復工事」と言います。

「原状回復工事」、「原状復帰工事」の意味

「原状回復工事」と「原状復帰工事」の意味に違いはあるのでしょうか。「回復」と「復帰」はほぼ同じ意味のため、「原状回復工事」、「原状復帰工事」は使い方としては間違ってはいません。同じ意味を持つ言葉として使用して問題はなく、どちらも契約した時点の状態に戻す工事のことを言います。使い分けとして、「原状回復工事」は契約書などの文言で多く使用されるのに対し、「原状復帰工事」は建設業界の用語であり、建設会社間の会話で使用されることが多いです。

復旧工事の使用シーン

復旧という漢字は、工事の実務上で使用される場合があります。例えば、原状回復工事の見積書などの詳細(明細)な項目として「復旧工事」、「解体工事」、「電気工事」・・・といったように使われます。復旧工事の内容は、クロス、床、ボードなどの補修工事などがあります。ただし、見積の内容や明細の作り方は施工会社各社で異なるため、必ずしも復旧という言葉が使用されるわけではありません。

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民間住宅と店舗・オフィス物件を借りた場合の原状回復の違い

民間住宅など賃貸用物件を個人で借りた場合と店舗・オフィステナントを法人で借りた場合では、原状回復の対象・範囲がどこまでになるかが異なります。ポイントとなるのは「経年変化、通常消耗を考慮するかしないか」です。「経年変化」とは時間の経過による避けられない老朽化のことで経年劣化とも言います。「通常消耗」は通常の生活を送る中での使用による痛みや損傷のことを言います。

個人の場合、国土交通省が民間賃貸住宅を対象として取りまとめた原状回復のガイドラインが公開されています。ガイドラインにおいては、下記の様に記載されています。

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。 

⇒原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化

引用:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

ガイドラインには、時間の経過による避けられない劣化や通常の使用範囲による消耗の場合には、原状回復の対象から外れ入居者が修繕費を負担する必要は無いということが記されています。

一方、法人でオフィスを借りた場合などの原状回復は「契約(入居)した時点の状態に戻すこと」です。原則、予め決められた原状回復の全てを賃借人が責任を持って完了しなければなりません。ただし、原状回復の範囲は入居の際に締結した賃貸借契約書に基づく形となるため、各物件で範囲は異なります。どこまでが原状回復の範囲となっているかは契約書をよく確認するようにしましょう。

原状回復工事にありがちなトラブル

ここでは原状回復を計画・実行しようとした時によくあるトラブルを3つご紹介します。

(1)出てきた工事見積が想定以上に高額だった

工事には、B工事と呼ばれる工事区分があります。B工事は、オーナーが施工会社を指定し、テナントが工事費用を負担する工事です。この場合、工事費が高額となるケースが多々あるため用心が必要です。

B工事費用が高くなる理由は、大きく3つ挙げられます。

①競争原理が働かない
②指定業者が交渉に応じない
③中間マージンが発生している

これらの理由についての詳細は、下記コラムで解説していますので合わせてご確認ください。

原状回復工事とは|法人向けに用語や相場・単価・工事費の削減するためのポイントを解説
https://nac-s.net/media/column/a96

(2)工事会社からの見積が発注期日の直前に提出された

工事会社によっては、発注者が見積内容の確認や検証するための期間を短くしようとわざと見積の提出を遅らせることがあります。また、正確な判断ができないように提案図面の種類を意図的に少なくしたりもします。必要な図面が揃っていない中で、見積が出てきてもその内容が妥当であるかの判断はできません。この様に工事会社は、受注確率を上げるため、粗利を多くするため自社に有利になるような動きをします。そのため、そうさせないための工夫を事前にしていく必要があるのです。

(3)受領した見積が高額なのか適正なのか分からない

見積内容を契約書と照合し高いのかどうかを査定するためには、一定基準以上の経験やスキルが必要です。また、工事にはA工事、B工事、C工事と呼ばれる区分があり、それぞれの工事がこの区分に対して適正に設定されているかが重要です。もし本来必要のない工事までテナントの費用負担となるB工事やC工事に割り振られている場合、余計な工事費が発生していると言えるでしょう。そのため、工事内容が合っているか、工事区分が適正に設定されているかを確認することは重要なのです。

ABC工事の特徴や解説は下記コラムをご参考ください。

A工事、B工事、C工事とは?工事区分についてわかりやすく解説
https://nac-s.net/media/column/a153

原状回復工事におけるトラブルを防ぐ方法

上記に上げたトラブルとなり得る内容に対して、どの様に対応していくと良いかをお伝えします。

(1)工事内容と工事区分を確認し適正なものに調整する

賃貸借契約書や特約、図面、見積書などを確認し、工事範囲や指定業者の有無、解約予告期間などを確認しましょう。A工事、B工事、C工事の範囲については工事区分表を確認することができます。B工事は費用を低減していために、なるべく少なくしていきたいものです。建物や物件全体に関わる工事(空調、防災、防水、給排水、分電盤など)でなければ、オーナーが費用負担するA工事であったり、テナントで施工会社を選定できるC工事に変更することもできます。工事区分を変更、調整するためには契約書や見積の内容をしっかり読み解く必要があります。

(2)適切なスケジュールを設定し運用する

物件の明渡し期日から逆算した上で、工事発注期日や見積の検証期間、工事期間などを考慮してスケジュールを作成しましょう。同時にスケジュールを作成する前には何をいつまでに行わなければいけないのか、タスクを把握することも重要です。入居物件を解約(退去)する旨を伝える解約告知は、6ヶ月前であることが一般的です。オフィス移転の場合であれば、この6ヶ月の間に現在の入居している物件の原状回復工事、移転先の内装工事、各工事の見積取得や施工会社の選定、交渉などを行っていく必要があります。適切にスケジュールを設定することが、適切な金額で工事ができるものと認識しましょう。

(3)見識がある第3者をアドバイザーに採用する

原状回復工事を適切に進めるためには、契約内容、商流、ステークホルダーの利害関係などあらゆる視点を踏まえることが肝要です。また、工事費についてオーナーや施設側と交渉するとなると、業界用語や建設業界特有の商慣習もありハードルが高く感じられるでしょう。そういった観点からも工事経験の浅い発注者とオーナーの間に立つ専門家に頼るのも一つの手段となり得るでしょう。

この記事の監修
山本 隆広(やまもと たかひろ)
株式会社ナックス 代表取締役
建築関係の専門学校を卒業後、デザイン会社に入社。 その後、コスト削減のコンサルティング会社に転じ、企業の工事費削減に取り組む。2012年に独立し、2013年株式会社ナックスを設立。完全成功報酬型の工事費削減サービスや工事の計画を個別対応するトータルサポートのサービスを提供中。今までに中堅中⼩企業から⼤⼿上場企業様まで幅広く⽀援し、 取組実績数は800件を超え、平均削減率約23%を実現している。

画像:代表取締役 山本 隆広


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