田辺 陽
当社が過去800件以上の工事発注のコンサルティングにお取り組みさせていただき、様々な事例がありました。
それらの事例から学べる工事費削減のポイントをご紹介したいと思います。
工事費の価格・コストだけを追求し過ぎて、どうしようもない状況に陥ってしまった発注者様の事例です。その発注者様は主要な駅前の物件へ多店舗展開をしており、内装工事については使用する材料や工事内容も規格化して標準的な仕様まで作り込んでいる程に徹底していた会社でした。しかし、施工会社様に対して安価な工事を要求しすぎて、その価格では対応出来ないと逃げ出され、噂も広まり協力を他に求めても相手にされなくなってしまう状況になっていました。そのため、常に施工会社を探し求めて問合せ、面談をしているようでした。結果として、施工会社を探すために社内リソースや人件費を投入しており目に見えないコストの流出が起きていました。
この事例から学べる要因は3点あります。
設計事務所や施工会社へ無理をさせ続けては、長期的に良い関係を保つことは出来ません。もちろん仕事を受ける側も企業経営をしているため、利益が出ない案件を受け続ける道理は無くなります。そうすると、必然的に協力会社は離れていくことになるでしょう。そうならないよう行なうべき事は計画している工事内容を得意とし地域性を考慮した適切な会社に適切な価格で発注するという前提をしっかりと念頭に置いておくことです。
社外に対するコスト削減を追い求めることに気を取られすぎて、社内オペレーションを無視してしまうと、社内で発生する人件費やそれに伴う販管費等の目に見えないコストが発生してしまいます。社外への支出をコスト管理することも重要ですが、社外ばかりに目をやりすぎてしまうと、先にあげた事態も起こりえますのでご注意下さい。
施工会社とは良好な関係を築くべきですが、それが馴れ合いの関係になってしまうことは抑止する必要があります。あくまで発注者が求めることは適切な会社に適切な価格で発注できる関係性や環境の構築です。非常に難しいことでありますが、このバランスを経営層が意識をして実務を担当する方々へ認識をさせる必要があるでしょう。
今回の事例は、施工会社に対して相当数の問合せして協力を求めても1社が見積を出してくれるかどうかという状況でした。その1社を探し出すのために相当な内部コストが発生していました。目に見えるコストも重要ではありますが、施工会社との関係性も意識をして「継続して発注できる環境を作ることが発注者側としてやるべき事」と言えるでしょう。