田辺 陽
何かしらの事業を新規開業される時、開業までに色々なことを短期間で行うことになります。そのため、工事の計画を余裕を持って進めるということは一般的には難しいものです。工事費は初期投資の中でも占める割合が大きく、事業計画に与える影響も多大です。
一方で、工事費を適正な水準にしていくためには、専門的な知識や経験が必要となります。それゆえ、知識、経験の差から工事会社に言われるがまま発注せざるを得なくなるということはよくあります。
今回、ナックスは医療法人社団Sunny様の武蔵浦和および府中院での新規開院でサポートさせていただきました。理事長である若林様にクリニック開院時の様子や支援した感想など伺いました。
ナックス支援前の課題 |
・B工事費の見積が高額であったが、どの様に対応したら良いか分からなかった |
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ナックスを導入した目的 |
・工事費を適正にして、工事スケジュールを調整するため |
-最初に、医療法人社団Sunny様がクリニックを運用するうえで、大切にされていることについて教えていただけますか。医療法人社団Sunny様のHPを拝見すると、「365日土日祝日も診療」 「子どもが安心して大人になれる社会に 大人が安心して子どもを育てられる社会に」などのコンセプトをもとに、目指すべき方向性や働く方の指針をしっかりと明示しているように見受けられました。
若林様:
私がクリニックを開院したのは今から約4年前になります。開院した当時から小児科は社会に不可欠なインフラであるとの考えから、子育て世代に貢献していきたいという想いがありました。
そのため、毎日診療するということをモットーにクリニックを運用しようと考えていました。そして、毎日診療するためには働いてくれる従業員のためにも、クリニック側で労働環境の整備をする必要があります。
-働く環境を整えることが、結果やりたいことである毎日診療に繋がっていくということですね。
若林様:
はい、そうだと考えています。その他に、もともと医療業界には、大きな病院の下に地域のクリニックがあるようなイメージがあります。しかし、クリニックは地域医療を支える重要な拠点です。医療業界で働く人にクリニックで働くことをより選択してもらい、誇りに思ってもらえるようにしたかったということもありました。
そのためにも、やりがいを持って働いてくれる環境を作ることが大切だと思い、Mission、Vision、Credづくりを行いました。
-なるほど、ありがとうございます。これから開院予定の府中院もいれて4院の展開となりますが、開院にあたっての計画は、若林様が行っているのでしょうか?
若林様:
1院目は私と開院前から一員に加わってくれたスタッフ2名の計3名で内装やデザインなどを考えていきました。それ以降は、リーダーとなるスタッフと意見交換しながら進め、広報や人事を担当するサポートチームが組織としてできたのでそことも話をしながら作っています。設計関係は古くから付き合いのある設計事務所さんがいるのでそちらと会話しながら内装を形にしていきました。
-若林先生には、工事業者から見積を取得する、発注するなどのご経験はあったのでしょうか?
若林様:
いえ、無いですね。
開院当初、工事に関する知識は全くありませんでした。1院目はテナントとして入居したというわけではなく、大手ハウスメーカーさん主導のもと土地に新たに建てる物件に入居する形でしたので大手ハウスメーカーさんに身を任せて進めるという形でした。父が建設業に携わっていたので、図面を見てもらい見積チェックをしてもらう、などはありました。
-開院を進めるにあたって心配していたことは何でしょうか?
若林様:
勤務医時代は、経営者目線というものはありませんでしたからね。特に組織づくりを意識した時に、自分が思っていることをスタッフさんにどう伝えていったら良いかなどは悩みました。
-工事を計画する、進めていくという点で困りごとはありましたか?
若林様:
工事に関してもたくさんありますね。2院目以降はいわゆるテナント入居という形で進めることになりました。
2院目は駅前のテナントに入居したのですが、B工事の見積を見てみると高額でびっくりしました。その後に開院したクリニック工事でのB工事見積は全て、「こんなにかかるものなの?」と思うほどの金額でした。
そして、B工事は指定業者から急に見積が送られてきますよね。けれど、見積内容についてこちらが連絡をしても、一向に返答してくれません。見積期限ギリギリになった時に初めて連絡がきて、こちらとしては「この金額で発注したくないのに、どうしたら良いの?」と言う感じでした。実際にB工事のやり取りが進まないことがあり、全体スケジュールにも支障がでました。
-B工事の指定業者側の思惑である、「見積の検討期間を短くしてそのまま発注をさせようとする考え」が見え隠れしますね。B工事を計画する時に気をつけなければいけない注意点の一つです。
若林様:
今思えばその様な魂胆だったのだなと分かります。しかし、当時は高額であると分かってもどこにどの様にして相談すれば良いかが全く分かりませんでした。家主、指定業者、仲介業者がいる中で、時にはディベロッパーや内装管理室など登場してきて、どう話をつけていくのかさっぱりでした。
さらに、連絡すべき相手が見つかってもどの様に交渉したら良いかも分からず、自己流でした。私は見積金額の妥当性や根拠の検討がつかなかったので、「進め方としてこのやり方は無いですよね」「B工事見積提出のやり取りのせいで遅れたからその分の賃料を負担してくれないか」といった工事内容というよりはコミュニケーションの取り方での交渉となってしまいました。
-若林様自身で交渉されて実際に金額は下がりましたか?
若林様:残念ながら、金額は下がりませんでした。話をしてもB工事側からは「この内容で工事しないと間に合わないですよ」と言われて、見積金額のまましょうがなく発注するという感じでした。
そんな状態でしたので、「オープンに間に合うのか?」がすごく不安でした。工事の進捗が少しでも遅れれば、後工程にある医療機器や備品の納品スケジュールもその分遅らせることになります。交渉をした場合に、スケジュールの先行きが見通せなくて困りました。
-ナックスとしては、3院目の武蔵浦和院からご支援をさせていただくことになりました。ナックスのサービスを聞いて、内容はご理解いただけましたか?
若林様:
はい。実際にお会いして内容を丁寧に説明していただいたのでよく理解できました。成功報酬で工事費が下がった分だけ報酬が発生するというものだったので、初期費用も発生せずにこちらとしては特段リスクが無く、ニーズ自体が私とマッチしていると感じました。
まずは支援いただかないと結果は分かりませんし、契約の意思決定をするのに時間はかかりませんでした。また、打ち合わせをする中で、交渉をどこまで踏み込んで行うかの度合いも説明してくれて、落とし所についても事前に擦り合わせしてくれていたので、トラブルが起こるということも無いかなと思いました。懸念点などは特になく支援を開始することができたと思っています。
-ナックスを活用してみて、実際いかがでしたでしょうか?
若林様:
まず、担当コンサルタントさんからのレスポンスが早く、信頼のおける方だなと思いました。レスポンスの早さは、私としては重要な視点の一つだったので、空気感が合うなと思っていました。
そんな感じでしたので、支援中も1週間に1回程度の定期報告と何かあった時は、逐一報告いただいていたので私としては何も心配することはありませんでした。
そのうえで、武蔵浦和のB工事費用を300万円近く削減してもらったので、本当に助かりました。
-その他にお感じなられたメリットなどはありましたか?
若林様:
はい、開院前というのは色々なことを一度にやらなければならないんですよね。さきほどお伝えした通り、B工事は高額でありながらも、自分ではなかなか交渉自体しづらく時間も手間も取られてしまうのに、成果を出しにくいものでした。B工事の交渉から開放されて、やるべきことに集中できたというのは支援いただいたからこそだと感じています。
その他にも、設計さん、C工事会社さんにとっても助かったことであったと思います。過去の開院では私がB工事会社とのやり取りが手に負えないということで、助けてもらっていました。ナックスさんがB工事交渉を担当することで、設計さん、C工事会社さんもやるべき業務に集中でき、負担が軽くなったと思います。
そして、何よりもナックスさんが入ったからこそ全体の工期や各種工事の発注リミットが確定できたことはすごく大きな効果でした。物の発注や搬入の準備など細かいことを含めて全体スケジュールを確定できたということは、私にとっても準備するスタッフにとっても余計な心配をしないで済むので大変ありがたい効果でしたね。
-B工事のスケジュールが決まらないからC工事のスケジュールも確定できないというようなことが起こらなかったということですね。
若林様:
はい、そうです。開院前の1日、2日は大きな意味を持つので、そこが確定できたのは本当に助かりました。
-サービス提供(コンサルティング)中に何か困ったことはありませんでしたか?
若林様:
うーん、特にないですね。強いて言えばですが、空調、換気、分電盤移設など工事項目によって請求書が分かれてしまい、どの請求書がどの工事なのかが途中で分からなくなってしまいました。なので、共有ドライブなどを使用して、やり取りがスムーズにできたら良かったなと思ったくらいですね。それぐらいです。
―見積書のフォーマットも各社で異なるので、受け取る側も整理がしづらいですよね。ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。工事を終えて何か問題になったことはありましたか?
若林様:
ナックスさんが入ってもらったB工事部分で何かあったということは全くありませんでしたね。C工事の部分で、現場にスタッフが入ってデモオペレーションした時に修正が必要ということはありました。なので、将来、また診療所を増やす時にC工事部分もナックスさんに入ってもらえると良いなと思っています。
―ナックスの支援を受けられて、クリニックを開院しようとしている方にメッセージがあればお願いします。
若林様:
私はとあるクリニック経営者のコミュニティに所属しているのですが、そのコミュニティでも「B工事の見積が高かった」、「C工事の調整がうまくいかない」といった話題はあがっていました。クリニック、診療所という名前がつくと、工事見積は割高になる、ということも聞きます。
我々も勉強していかなければならないのですが、開院時は忙しくどちらかというと診療に来てくれる方達に目を向けたい気持ちがあります。ナックスさんはそういう業界の現状を正しくしてくれて、かつ、経営者がやりたいことに時間を割けるようサポートしてくれるサービスなのかなという印象です。
―ありがとうございます。最後に、これからの展望などありましたらお聞かせください。
若林様:
今、開院を進めている府中院を合わせると4院開院し、元々考えていた構想に近づいたと感じています。なので、これからは一院一院の質を高めるフェーズかなと思っています。働くスタッフ一人ひとりがSunnyで働くことを誇りに思ってくれる組織にすることが第一です。
その結果、Sunnyに診療に来るお子さんやご家族が気持ちよく通い、また来たいと思ってもらえる様にしていきたいと考えています。数年かかると思いますが、少しずつしっかりやっていきたいと思っています。
その先に、もっと活動の幅を広げるというのはあるかもしれませんが、まずはしっかりと地域貢献するということをクリニックとしても掲げて活動していきたいと考えています。
そして、場所としても地域貢献を考えて平塚周辺で考えています。自社物件の活用も含めて、立地や物件条件なども幅広い形で検討していき、そこから店舗を広げていきたいと思っています。
―本日はお時間をいただきありがとうございました。
取材日:2024年9月某日